この仕組みをもう少し詳しく見てみましょう。あなたの脳内には「COMT(コムト)」という酵素があります。使い終わったドーパミンを回収する掃除係のようなものです。人によってこの掃除係の動きが速いタイプと遅いタイプがあり、あなたは遅いタイプ(Met/Met型)にあたります。
掃除係がゆっくりということは、ドーパミンが脳の司令塔(前頭前野)に長く留まるということです。これが「じっくり考える力」の正体です。科学ではこのタイプを「Worrier型」と呼びます。「心配する人」という意味ですが、「精密機械型」と呼ぶ方がずっと正確でしょう。
興味深いのは、この特性が平常時にこそ威力を発揮することです。プレッシャーのない日常の中で、あなたの脳は他のタイプより高い精度で情報を処理しています。書類のミスに気づく、計画の矛盾を見抜く、相手の言葉の裏を読む。こうした「気づき」の一つひとつが、ドーパミンが長く留まっているおかげで可能になっています。
一方で、この掃除係の遅さは諸刃の剣でもあります。ストレスが重なると、ドーパミンが溜まりすぎて脳が「渋滞」を起こすことがあります。これについては「課題」のセクションで詳しく触れますが、まずはこの特性が持つ圧倒的な強みを知っておいてください。あなたの慎重さは、生まれつきの脳の配線が生んだ、れっきとした才能です。